今をときめく意識高い系ニュースメディア、NewsPicks。この有料会員サービスの上位バージョン「アカデミア」は有料コンテンツを読めるほか、書籍が送られてきたり、ビデオ講座が見られたり、イベント・セミナー参加ができたりと5,000円の価値がある非常に有益なサービスです。先日の「メモの魔力」の本の話もアカデミアでもらった本ですね。ちょくちょくイベントには参加しているのですが、先日行われた「起業家の思考法(ゲスト:ラクスル 松本恭攝氏)」のお話が深イイ話だったので、意識の高いみなさまにも共有しておきます。
メモに近い形ですがご容赦を。聞き間違えもあるかもしれません。
NewsPicksアカデミア イベント「起業家の思考法」 ラクスル CEO松本氏の回 概要
新進気鋭の起業家を招いて、その思考法、発想法、そして描く未来に迫る連続イベントシリーズで、このイベントは、起業家の方、これから起業されようとしている方、企業で新規事業を起案しようとしている、もしくはした方には非常にすばらしい知見、知恵を授けるイベントではないかと思います。おすすめです。もうこれを聞いただけでも5,000円分の価値があったと思えます。
第3回となった、起業家の思考法は、印刷・広告のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」などを運営する、ラクスル代表の松本恭攝(まつもとやすかね)氏をゲストに招き開催されました。
松本 恭攝 / Yasukane Matsumoto(ラクスル株式会社 CEO & Founder) 2019年3月14日(木)18:30〜 @NewsPicks Roppongi(東京ミッドタウンの向かいにできた新しいビルに入っているなんていいなぁ)
「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを掲げ、インターネット上で印刷や物流のシェアリングプラットフォームを展開するラクスル。旧態依然とした産業にインターネットを持ち込んで、産業構造そのものを変革してきた。代表の松本氏は、Forbes誌が選ぶ「日本の起業家ランキング2018」第1位にも選出されおり、今一番ノッている起業家といえる
思考方法は、NewsPicks編集部でも、すでに記事となっているが、本人が今回のイベントでは登壇して話すことになっている。※有料記事
松本 恭攝氏 プロフィール
 1984年富山県生まれ。慶應義塾大学卒業後、A.T.カーニーに入社。コスト削減プロジェクトに従事する中で、6兆円の市場規模がある印刷業界に効率化が行われていないことに注目し、インターネットの力で印刷業界の仕組みを変えるべく2009年9月にラクスル株式会社を設立。印刷機の非稼働時間を活用した印刷のシェアリングプラットフォーム事業「ラクスル」を展開する。2015年12月からは物流のシェアリングプラットフォーム事業「ハコベル」も開始。2018年、Forbes JAPAN誌が選ぶ「日本の起業家ランキング」で1位獲得。
次にラクスルが参入する業界は? どこなのか
印刷業界、物流業界に切り込んだラクスル。会場のみなさんが考える、次に参入すべき業界はこんなのはどうか?と会場の声を松本さんに聞いてみた。会場から上がったのは次の2業種。
保育、介護業界はどうか?
テクノロジーが入りづらい業界、人がつぎつぎに辞めてしまい人が育たない業界
松本さんの考え
負が大きい 規制業界である 規制により低価格
ビジネスで入れるのか?
ロービー活動が必要 情熱が必要では
水産業はどうか?
松本さんの考え
行政改革が必要な業界か?
民間企業が入っていない領域
JAがいる
JAスキップする仕組みとしては、オイシックスがある
漁業、農業の一次産業はおもしろそうだ
新規参入が起きない領域は、イノベーションが起こると伸びる可能性が高い。そして、大きな価値を出せる可能性が高いだろう。
これはハウスメーカーの下請構造なんかにも言えそうです。ゼネコンレベルではなく、住宅ではそれが言えそう。設計事務所からなにからネットでつなげられるといいかもしれないですね。
ラクスルが参入する業界とは
- コントローラブルな業界に入りたい
 - 市場規模がとても大きい業界 かつ 単価高めな業界
 - QOLを高めるられる業界
 
もともと松本氏は、ATカーニーに新卒で入り、リーマンショックの影響で、コスト削減のプロジェクトばかりを対応していた。これが非常に役に立ったという。 印刷業界参入にあたっては、6兆円規模の売上があり、3兆円が凸版、DNPの寡占状態となっていること。そこから下請けに仕事が流れる構図。1兆円規模の下請構造は非効率な業界と考えた。
ラクスルとはどんな企業なの?
ラクスルとは
2009年に創業したシェアリングプラットフォーム企業
全国の印刷会社と提携、印刷機の空き時間を使って印刷し、高品質 低価格を実現する印刷 eコマース「ラクスル」を展開している
2015年 荷主と運送会社をオンラインでつなぐ、運送マッチングサービス「ハコベル」を開始
2018年5月 東証マザーズ上場 時価総額は1,330億円(2018年3月15日)

当時、印刷業界でミスミ(金物部品世界一)を作ることを考えた。 営業のいない商社がつくれないか?? というのが、ラクスルの出発点。
ラクスルのビジョンとは
仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる
印刷や、物流といったデジタル化が進んでいない伝統的な産業に、インターネットを持ち込み産業構造を、変えることで、より良い世界を実現する。
まずは、印刷の一括見積のサイトをつくった。ベンチャーキャピタルが入り資金調達ができてから、もともとやりたかったEコマースモデルに変更。資金調達ができるタイミングで、ECにピボットしたかったという。
ECに変更するにあたり、相当なマーケティングにかなりお金がかかったが、これは想定内。成功しているECのマーケティングコストを調べ、どのくらいのコストがかかるかを事前に知っていた。成功するサイトの投資額のイメージを持っていた。※自分の頭で考えないこと ベンチマークを見る。他の企業がどのくらいのコストをかけて、でかくなったかを確認して、アプローチ。逆算して考えると良い。
垂直統合産業をプラットフォームで水平分業にアップデート

大企業が中心に垂直統合で成立していた産業構造を、プラットフォーム中心の水平分業化された産業構造にアップデートする。
インターネットでネットワーキングすることで、仮想的に巨大な印刷会社を作る。これまで大企業が担っていた保証や信用を、プラットフォーマーが担う世の中になった。
需要と供給がスグにマッチするのが重要。
ラクスルの事業は大企業とかぶらないか
かぶらない。デジタルは小ロットのものが中心。平均単価がぜんぜん違う。印刷 1件 500万円以上などは大手でうける。ラクスル 1万円程度。1億円の印刷が来てもそれは受けたくない。
21世紀はプラットフォームの時代
世界の時価総額TOP10はすべてプラットフォームのしくみ でしょう?
21世紀はプラットフォームの時代になる。トランザクションコストを下げ、デマンドサイドが、より多くの発注を受けられる。サプライサイドがより多くの収益を得られる世の中になる。
起業家が日本はいない。なぜ打って出ないのか? 日本は少しでも、競争があると過度に拒絶反応を起こしやすい。重い事業は、誰もやらないからホワイトスペースになりやすいのではないか。
インターネット広告はやらないのか言われるがやらない。なんでやらないのか?というと、ラクスルがやらなくても、だれかがやる競争が激しい業界だからやらないのだ、と。

ラクスルは印刷会社ではない +物流をすると、まったくちがう会社になる
業界経験者がはじめるのではなく、業界外の人が入ったほうが、まったくあたらしいものができるのではないか。
改めて、新規参入業界の探し方
ラクスルが参入する業界と近い内容だが、以下のポイントに着目すると良いのではないかという話が出た。
- 市場が大きい、大手が寡占している
 - 下請構造がある
 - ぱっと見、儲からない
 
BtoBと決めているという。これは動く金額の額が大きいからというのもあると思う。松本さん本人が言っているが、本人のセンスがないからBtoBしかできない、と言いつつも、本人の好みとして、QCD(クオリティ、コスト、デリバリー)がはっきりしているものをがいいらしい。
ラクスルの採用について

ビジョンに共感のない人を採用すると辞める。
Aクラスの人はAクラスを採用するが、BクラスはCクラスを採用する。CクラスはDクラスを採用するという。リーダーは自分よりも優秀な人を採用すべき。そうでないと組織が劣化する。
採用がすべてである
採用は人事の仕事ではない
グレードが同等もしくは、自分よりも上のグレードの人を採用しないと昇進できない仕組みにしている。
カルチャーフィットが必要。ワークサンプルテスト(実際の仕事をする)をする。こちらもむこうも無茶苦茶コストがかかるが、それでも実施し、ビジョンに共感した人を採用することが重要である。
優秀の定義とはなんなのか
リアリティ
解像度を高める
論理的に考えるは優秀ではない、現場の観察によりリアリティを高める
システム
その解像度からの解決策を、それをどのようにかシステム落とし込めること。仕組み化する力
チームワーク
複数の職種の人を調整できる (といったようなことをいっていたと思う)
リアリティ、高解像度 × インターネット
人は給与だけで人は転職するのか? そうではないはずだ。どれだけ魅力を語れるか、ビジョンが共有できるかが大切だ。
製造業からの転職者は採用したい。日本のナレッジは凄い。自動車、工作機器、精密機器 → 印刷、物流で業務の効率化をするとすごいはずだ。
メディチインパクト
イノベーションがいかに生み出されるか?
種類の違う掛け合わせ
→イノベーションが大きくなる
サービスを多面的に見る、歴史をさかのぼってみる(時間軸を加える)
深い思考になるにはどうすればいいのか?
長い将来を知るには、長い歴史をみる必要がある。
オリジナルに見えるものはアノロジー(類推)である。
資本主義は福利の仕組み。長い時間軸で取り組むことが大きな成果を生む仕組みである。個人のキャリアも、投資も本質を見抜き、長い時間軸で投資すべき。
ほとんどの人が、長い時間に耐えられない。ラクスルはとれる時間軸が長い。短期ではない。多くの人が短期で投資、断片的である。ラクスルでは短期のリターンは求めない。長期が重要であると理解すべき。
すばらしい投資家はすべてロングタームで投資を行っている。
何を実現したいのか? 本質的な顧客価値を実現する。
A/Bテストは短期施策であり、やりすぎてユーザーが離れていったこともあった。長期で熟成されるものをつくることで、利用率が上がる。カルチャーを作る。
どのように浸透させるのか?
30年後に日本のインフラになると言い続け、組織に浸透させる。
90分という時間の中でかなりの密度のお話が聞けたのではないでしょうか。起業家がどのように考え、どのように行動するのか、非常に興味深い内容でした。普段、絶対聞けない話、サラリーマン同士が飲み屋へ何回行っても絶対に出てこない話がNewsPicksを通じて聞けることはすばらしいことですね。
NewsPicksアカデミア 月額5,000円ですが、入っている、取っているというカッコいい、意識高いように一見見えます。NewsPicksはそういううまいところを付いたメディアであるとは思いますが、意識高いように見せるみたいな表層的な話ではなく、真面目に有料で、普段無料のメディアではアクセスできない情報を取りに行く気が、本気であるのであれば、ぜひ利用してみてください。
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